倒産危険度ランキングを業界別に経済誌が発表したのは、コロナ禍が始まる前のこと。Zスコアと呼ばれる数値に基づいて倒産危険度ランキングを決定します。
アパレルでは20代に人気のあったサマンサタバサや、紳士服大手、卸売りが全てランキングしています。
今回は倒産危険度を現わすZスコアの算出法、誰が考えたのか、倒産危険度業界第2位(ワースト1は農業)と言われるアパレル倒産ランキングの実情に迫りたいと思います。
目次
Zスコアは半世紀以上前に開発された倒産危険度数値
Zスコアは半世紀以上前に開発された倒産危険度算出法です。開発したのは米国の経済学者で、ニューヨーク大学スターン経営大学院名誉教授・エドワード・アルトマンです。
アルトマンがZスコアを発表したのは’68年9月。正確な数値を算出するにあたり、以下の点に気を付けたそうです。
- 戦後から1966年までの約20年間、66の株式会社、33の合資会社(製造業のみ)を調査
- 上記会社の倒産、倒産しなかった会社に分けて、財務分析
- 有利子負債が多く、総資産が膨らむ業種(鉄道、不動産、電力など)を調査対象から外す
- 歴史の浅い企業、非上場企業は外す
驚くのが開発された50年前と基本的な算出方法が変わっていないにも関わらず、企業の倒産危険度を正確に把握できることです。半世紀前は上場企業に対する倒産危険度しか把握できなかったZスコア。平成末期から日銀の研究員により非上場企業にも対応できる様になりました。
Zスコアの精密度をあげるための今後の課題は、歴史の浅い企業の倒産危険度を正確に算出できるようにすることです。
では実際に現在も通用する倒産危険度Zスコアの公式はどんなものでしょうか。
Zスコアの危険水域は1.8以下
倒産危険度Zスコアは5つの指数(収益力指数、支払能力指数、活力指数、持久力指数、成長力指数)の平均で成り立ちます。大企業の場合さらに複雑な算出法になります。
この数値が、投資家、融資先の銀行から見て3以上だと問題なし、1.9~2.8だと懸念あり、1.8以下で危険水域とされています。
サマンサタバサが危ない理由
問題になったサマンサタバサですが、’23年現在倒産危険度7位になっています。
一時期はレストローズを買収する程、力があったサマンサでしたが、’20年7月に紳士服コナカの子会社に。コナカも倒産度ランキングでは20位になっています。
メインバンクの三井住友などメガバンク4行から87憶を借入したものの返済期限の’23年10月まで返却できず、’23年末の自己資本率は1.3%未満。’24年には倒産秒読み。路面店撤退が相次いでいます。
サマンサより危ないアパレルは、どこの会社でしょうか。
アオキ、はるやま、ブルックス・ブラザーズ、紳士服倒産の危機
アパレル倒産上位に入っているのは、いずれもコロナ禍の煽りを受けた企業です。1位は和雑貨の和心。採算の取れない店舗閉店とSNSインフルエンサーにより株価底上げを狙っていますが、Zスコアマイナス4はどうしようもありません。ワースト3にランクインした企業は監査法人から『継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)に関する注記』が出ています。
いわゆる企業に対するレッドカードです。
2位のアマガサは合皮婦人靴の小売り、卸売。3位は創業大正14年の子供服のキムラタン。少子化により9割店舗削減が影響しています。
5位はブルックス・ブラザーズを展開するダイドー・リミテッド。ボタンダウンシャツで有名なスーツですが、在宅勤務が多くなりスーツを着る機会がなくなったのも要因のひとつです。
アオキ商事、はるやまホールディングス、AOKI、コナカの大手紳士服4社も、お家騒動、五輪に伴う問題など自社財務以外にも不安定材料があります。
倒産危険度Zスコアとアパレルのまとめ
いかがでしたでしょうか。
倒産危険度スコアとアパレルは密接な関係にあることが判ったと思います。アパレルの多くはスーパーか百貨店に品物を卸すか店舗を展開します。その為株上場し、売れ行きが良ければ無理をしてでも店舗展開することが多く、そのツケを払わされるのは従業員なのです。Zスコアとアパレルのまとめは以下の通りです。
- 倒産危険度を図るZスコアは半世紀前、’68年に米国の経済学者アルトマンが発表
- アルトマン曰く、コロナ五類後の倒産はリーマンショック以上に酷くなるという
- Zスコア業界日本ワースト1は農業、2位はアパレル
- 日本でワースト3までは監査法人から『ゴーイングコンサーンに対する注記』が出ている
- 大手紳士服4社、中堅もいれると5社が倒産危険率に入っている
- サマンサが倒産秒読みなのは、買収元のコナカも危ないから
この記事を御覧になって、倒産危険度の予測の参考にして頂けると幸いです。